目一杯軽量化したいときはアルコールストーブを使うが、冬場や、一泊以上の山行ならばガスを使う。
僕が冬にガスを使う理由はふたつある。冬、アルコールストーブは気温が低いと気化しにくくなるという理由がまずひとつ。ガス、特にブタンガスも低温に弱いが、プロパン混合の寒冷地向きガスを選べば問題は無いが、アルコールストーブは10℃を下回ると引火点を下回り、点火が厳しくなる。
もうひとつの理由は、アルコールストーブの煩雑な組み立てを冬の気温のなか手作業でやるのが大変だからだ。冬は風も強いので細かい作業には向いていない。一方、ガスは圧倒的に楽。
ちなみに冬ならばガスよりガソリンのほうが寒さに強いが、僕はそこまでの厳冬を攻めないので僕はガソリンストーブは持っていない。ガソリンはミスが起こりやすいとも聞くし、厳寒地でない限り、プロパン混合比率が高めのガスで十分事足りる。
一泊以上の長期の山行だとアルコールストーブであっても燃料が増えていき、軽量というメリットが少なくなってくる。重さが同じようなものだったらガスを持ってた方が確実なので、夏場でもガスを選ぶ。
ガスストーブは軽くて小さなものを選んでいる。どうせクッカーは1人用の深型なのだからゴトクは小さくても構わない。僕は最近はFire MaplesのストーブFMS-116Tを使っている。こちらのストーブはバルブ部分以外はチタンでできており、軽く、形状も構造もシンプル。公称出力は2820w.
Fire Mapleは中華ブランドで、いわゆる模倣品も多いが、最近は独自のブランドを確立させようとしているストーブのブランド。
自社ブランドでガスカートリッジも作っており、そこら辺に転がっている模造メーカーとは一味違う。以前はネット通販で手に入ったが、現在ではこういった日本の検査機関の合格証が無いガスストーブの流通に規制がかかっているようだ。
日本で検査を受けていないストーブは一酸化炭素が多く不完全燃焼気味だったり、リフティングという、ガスの勢いが強すぎて炎穴より上方に浮いて燃焼する現象が起きたりする。リフティングするとバーナーヘッドと炎に隙間ができて、そこに風が吹くと極端に消えやすくなる。
しかしこのストーブはその心配はなさそうに思える。シンプルな円盤型のバーナーヘッドは非常に薄いが、よくガスと空気が混合されている。炎は広範囲でありながら垂直に上がるので深型、浅型どちらのクッカーにも合う。炎もリフティングせずに安定しており、炎の色も青く正常だ。
ちなみに僕はいつも山ではガスストーブで風防は使用しない。まともなガスストーブならばちょっとくらいの風ならばMAX火力で凌げる。どうしても強風の時は岩陰等を使う。
弱火の状態。
ちなみにこのストーブは点火装置は付いていない。もともと付いていないモデルだが、どうせライターを持ち歩くのだから最初から取ってしまってもいい。点火装置というものはどんなブランドでも壊れやすく、それに頼るのは山ヤとしてはナンセンスだ。
ちょっとここで点火装置について話そう。ここで言う点火装置とは圧電点火装置のことで、圧力をかけると電流が発生するメカニズム(ピエゾ効果)を利用したものだ。点火装置の故障とは、スイッチのバネの不良で圧力がかけられなくなったり、電極を覆うセラミックが割れてヘッドに放電する前に漏電したりすることを指している。電極から火花が出ているが、火がつかないのならばそれは点火装置の故障ではなく、ガスが出ていないか、ガスの出が弱いだけだ。寒さにや気圧でガスの出る勢いが弱くなると、点火装置の火花だけでは引火しにくくなる。ライターや大きな火花で引火させてやるといい。
ちなみにここ数年Amazonでブレイク?しているチタンストーブがこのBSR-3000T。僕も面白半分で一個買ってみた。恐ろしく軽量だが、山行での使用はお勧めしない。先に言ったとおり検査を受けてないものであるため、通常のストーブとは挙動が明らかに異なる。小さいくせに恐ろしいまでにガスの勢いが強く、リフティングをするので、燃焼効率は悪い。火を弱めると色が赤くなり不完全燃焼になる。単純に炎の制御が難しいので危険である。