よくゴアテックスなどのレインウェアの防水性能を表す言葉として「耐水圧」という言葉を聞く。耐水圧とは何か。とある防水シートを知ってから色々改めて調べてみた。
※誤記があったので加筆修正しました(2025.4.9)
防水性の単位について(kPa)と(㎜)
きっかけはWÜRTH(ウルト)社(ドイツの建材メーカー)のWÜTOP HEIM SHIELD(ウートップ ハイムシールド)を手に入れたことだ。これは建物の壁面の内側に貼るシートで、施工することで建物に防水性を付与しつつ、透湿性能もあるので湿度がこもらず結露しにくくする効果がある。なぜハイムシールドを手に入れたかというと最近このシートがフロアレスシェルターなどのグラウンドシートとして注目を集めているからである。なのでレジャーシート代わりになるかなと思い実験的に買ってみたのだ。
しかし買ってから色々と疑問が生じてきた。そのひとつは防水性の表記である。カタログには46kPaとある。キロパスカルであり、ウェアなどの防水性の単位(㎜)とは違うのでいまいちわからない。そこでAIで調べてみると46kPaは460㎜だったが、Xでフォロワーさんからご指摘をいただき改めて調べると約4690㎜だそうだ。これは防水性があるとは言えるが圧力がかかると浸水の不安がある性能。ちなみにモンベルのゴアテックス製品で20,000㎜以上である。
山岳テントの防水性とは
テントの防水性能でいうとどうなのだろうか。日本が誇る山岳テントブランド、エスパース製品のページを見てみると「スーパーライト」のフライシートがPU防水加工による2,000㎜/平方cmとある。
単位は(㎜)ではなく(㎜/平方cm)である。ではこの違いは何だろう。
単位(㎜)で表される防水性は静水圧試験(JIS L 1092)で計測したものだ。これは記事に水柱を当てて一定速度で加圧していき、漏れたときの水柱の高さを計測するものである。JIS試験では水柱の底面積は100平方cmなので1平方cmあたりに換算すると単純計算で100倍の性能があることになる。これもXでご指摘をいただき改めて調べると2,000㎜/平方cmも2,000㎜と同じことらしい。(㎜)も生地1平方センチあたり何mmの高さの水圧まで耐えられるかということらしい。
エスパースは取扱説明書にグラウンドシートが耐水圧2,000㎜であると明記してあり、「体重が加わると水がしみることがある」と書いてあり、テントマットの併用をすすめている。
ハイムシールドはテント周りに使えるか。
翻ってハイムシールドの耐水圧性能はテントのグラウンドシート以上の耐水性があることになる。最初は計算を大いに間違えて「使えない」と言ってしまったが、すまん、ありゃウソだった。
しかし耐水圧5,000㎜だとやはり人が乗ってしまうと水が染みる可能性があるのでさらにテントマットやマットの追加はあったほうが良いかもしれない。ちなみにすでにみんな大好きなタイベックはソフトが防水性19.6kPa、ハードが17kPaとなっており、ハイムシールドより劣っている。
ハイムシールドの透湿性
ゴアテックスの透湿性能としてモンベルストームクルーザー2024年モデルで35,000g/平方m・24hrs(JIS L 1099B)とある。ハイムシールドはいくつかというと透湿抵抗0.28m2sPa/μgとある。これではわからない…。
ChatGPTによると0.28 m²·s·Pa/μg は、JIS L 1099Bの透湿性能に換算すると約 3,571,429 g/平方m・24hrsとなるらしい。が!しかしここもXでご指摘が入ったので訂正する。単純な逆数だとこんなアホみたいな数字になるが現実的数字を出すには標準環境としての水蒸気圧差を用いるのだそうだ。ちなみにウェアなどを検査する際の環境設定だと水蒸気圧差は560Paになるらしくてそうなると1,652g/平方m・24hrsとなるらしい。透湿性はウェアなどの防水透湿性素材と比べるとほとんどないと言えよう。グラウンドシートやゴザ代わりに使うのなら透湿性は無くても問題ない。
結論:ハイムシールドは面白い素材!建材屋さんで買えます。
結論としてはハイムシールドがここ最近グラウンドシートとしてもてはやされていることについて、数値的にはかなり疑問がハイムシールドはテントの下のグラウンドシートやフロアレスシェルターのグラウンドシートに十分使える素材である。他にもタープにも使えそうな面白い素材である。何よりデザインがインダストリアルでかっこいい。
ちなみにこちらは長野県上田市内の(株)合津建材さんから2,000円/mという破格で売っていただいたものだ。幅1mのみの取り扱いになる。建材屋さんなので基本的にはエンドユーザーとは取引はしないらしいがこれについては販売可能とのこと。問い合わせをしてもかまわないそうだ。なお、販売価格については諸般の事情で変更となる可能性があることは予めご了承願いたい。
おわり
2025年4月3日
2025年4月9日(加筆修正)