軽速山歩

登山者が実践するファストパッキングスタイルへの道

FireMaple / HORNET II / 48g &Petrel Ultralight pot 600ml / 160g

中華製高効率クッカーの実力をテスト

チタン製軽量ストーブ(シングルバーナー)と高効率・低燃費クッカーを組み合わせることで熱効率の良い軽量ソロクッキングシステムを完成させた。高効率で燃料の使用量を減らせるし、完全一体型ではないので汎用性が高いのが強みだ。

 

110サイズカートリッジが収まる高効率クッカー

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中国が誇るアウトドア燃焼機器ブランド、ファイヤーメープル。大手を模した後発製品は多いものの、単なるパクリというだけではなく、独自のものづくりができる侮れないメーカーだ。

 

www.fast-packing.com

 

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そのファイヤーメープルのPetrel(ペトレル)Ultralight pot 600ml は「ヒートエクスチェンジャー」というストーブの炎の熱を効率よくクッカー内に伝えるためのヒダが底部にある。有名なジェットボイルでいうところの「フラックスリング」だ。

ちなみに、この手の高効率・低燃費クッカーは一酸化炭素が大量に出る場合があるため、当然屋内使用は厳禁。

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ファイヤーメープルのラインナップで今までもこのような高効率・低燃費クッカーはあったが、容量が1リットル以上とソロモデルではなかった。ペトレルは「ウルトラライトポット」を謳うだけあって最大容量は600mlのソロ仕様で110サイズのOD缶ガスカートリッジがピッタリ入るし、ストーブとスタビライザーがスタッキング可能。そう、このサイズが欲しかったのだ。重量は160g。

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蓋は透明樹脂素材、持ち手はシリコン製、湯切り穴がある。目盛はオンスとml表示あり。付属品はメッシュサック。

ちなみにペトレルとはミズナギドリという鳥類で一般的にウミツバメのことを指すらしい。

三本ゴトクストーブの使用を想定

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しかし、このペトレルの底部だが三本のスリットが放射線状に走っている。これはどういうことかというと、三本ゴトクストーブを使うことで安定し、かつ理想的な炎とクッカーの距離を作れるということなのだろう。

四本ゴトクのストーブだと使えないことはないが、スリットにゴトクがハマってしまうとクッカーが倒れるため、置く時に気をつけなければならない。このペトレルは三本ゴトクのストーブ専用と考えたほうがよさそうだ。

専用ストーブHORNET IIを入手せよ

画像出典:https://firemaplegear.com

ならば専用のストーブとして何が相応しいか。それはやはり同じファイヤーメープルから出ている三本ゴトクモデルがよかろう。公式の画像を見るとどうやらHORNET II(ホーネットII)というストーブを使っているようだ。直噴型で底部と炎の適度な距離が生じるので確かに相性は抜群に良さそうだ。

また、一酸化炭素発生リスクから考えてもメーカーが想定する専用ストーブを使ったほうがいい。鍋底と炎が近いと一酸化炭素濃度がさらに上がる可能性がある。

しかし問題は日本では未承認のモデルであり、国内では手に入らないことだ。そんなときはAliexpress(アリエク)である。国内で検定に合格していないガス機器を国内業者は販売できないが、海外業者は関係ないし、購入する分には問題ない。ただし国内メーカーと異なり使用してもし何か事故が起きても一切購入側の自己責任になるが…。

HORNET(ホーネット)IIの特徴

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早速取り寄せて見るとなかなかスマートなストーブである。点火装置は無し。重量は約48g、ゴトクやヘッドはチタン製で軽量。五徳は展開すると直径10cmくらいになるが、逆に直径7cm以下のものは乗せられない。出力は2.5kWで燃料消費量は179g/h。

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ヘッドの形状はあの有名なBSR社の超軽量ストーブのようにトルネード状のスリットから炎が出るタイプ。付属品は専用プラケース。

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燃焼音はなかなかの轟音。炎は単なる直噴というより直噴+拡散型という感じでBSRストーブと似ている。

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そして特徴的なのはゴトクの開閉方式。折り畳み傘のように上にスライドし、ゴトクを開閉するような形。展開後にややガタつきがあるのがイマイチだが専用クッカーを使えば問題ないだろう。ちなみにホーネットとは蜂、特にスズメバチの意味らしい。

本当に早くお湯が沸くのか

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いよいよ二つを組み合わせてお湯を沸かしてみようと思うが、通常のクッカーを使用した場合よりどれくらい沸騰が早いのかテストしてみる。

比較するのはチタン製の同じ径のクッカー(EPIのバックパッカーズクッカーS)である。共通の条件は水は300ml、気温3℃の屋外でテスト。蓋は無し。沸騰の定義は「大きな気泡が水面をグラグラと揺らし始めたとき」とする。

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まずチタンクッカーとホーネットの組み合わせ。中央部に気泡が発生するのは早かったが、その後気泡が大きくなるのに時間がかかった。結果は3分57秒。

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続いてペトレルとホーネットの組み合わせ。小さな気泡は中央ではなく周辺部から発生し始めたがチタンクッカーに比べると遅い。その後なかなか気泡が大きくならなかったがいきなり大きくなり沸騰。結果は2分30秒。なんと1分半近くも早く沸騰するという優秀な結果となった。

208gの低燃費軽量クッキングシステム誕生

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ストーブとクッカー合わせて208g、それにガスカートリッジとスタビライザーを加えると重量はその分増えるが、同じようなシステムのジェットボイル「スタッシュ」のクッカーとストーブの重量200gとほぼ同等の重さを実現している。この非一体型のシステムは完全一体型と比べて調理の汎用性が高いのが強みだ。

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高効率・低燃費クッカーというと「どれくらい早く沸騰するか」という視点で見られがちだが、これは見方を変えると「どれくらい燃料消費を抑えられるか」とも言える。燃焼時間が短くなるのだから当然消費されるガスの量も少なくなるからだ。

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このペトレルとホーネットIIの組み合わせは、チタンクッカーを使用した場合と比べて63%程度の燃焼時間であり、燃料の消費量をおよそ40%抑えることができる。110缶ひとつでより長く山行を続けられるのだ。アルコールストーブや固形燃料も軽量化にはなるが、より手軽に、より確実に…となるとガスが良い。そしてなるべく燃料の重量を抑えたいとなると、この組み合わせは理想的だろう。

ただし日本未承認のストーブを使ったり一酸化炭素が多量に発生したりとリスクが大きいので使用には厳重な注意が必要なのは言うまでもない。

 

 

 

おわり
2024年3月22日