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【レビュー】GARMIN Instinct Dual Power 54g ソーラー充電スマートGPSウォッチのタフネス度を深掘り

GPSウォッチとスマホアプリを比較

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ガーミンのアウトドアスマートウォッチInstinct Dual Power(インスティンクト・デュアルパワー)をトレランやファストパッキング目線で、スマートフォンGPSアプリとの比較に重きを置いて少しレビュー。

 

ほか、気になる耐久性については米国防総省のMIL-STD-810Gのどんな試験項目をクリアしており、その内容はどういうものなのか?ということを原文をチェックして確認。他に100ATMの防水性が意味するところや太陽光充電の基準となる50000ルクスはどれくらいの明るさなのか?ゴリラガラスDXはサファイアガラスと比べてどうなのか?というところまで調べてみた。

 

  

ついにタフネスGPSウォッチがソーラー化

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2020年7月発売のInstinct Dual Powerは前作Instinct にソーラー発電機能を付与したモデルだ。他にも少々機能が付与されているが、大きな違いはソーラーがあるか無いかと言って差し支えないレベルだろう。

 

前作のInstinctは「タフネス」が売りのアウトドアGPSウォッチだった。そこにソーラー発電機能が備わってバッテリーが長寿命化。ますますアウトドアシーンで活躍が期待できそうだ。

 

ところでガーミンといえば、GPS機器の代名詞的存在だ。僕の中では長年、GPS機器といえばとても高価で便利であるが、なかなか手を伸ばしにくい存在だった。しかし…。

 

スマートフォンGPSアプリのメリット

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しかし、ここ数年、スマートフォンアプリでGPSアプリが目覚しく進歩してきていて、GPSが非常に馴染みのあるものになっていた。僕がiPhone 11で使用しているGPSアプリは「ジオグラフィカ」というアプリ。(上の画像もジオグラフィカ画面)

 

地形図が表示されるので主に地図がわりにして、現在地を確認するのに使っている。ナビゲーションは使っていないが、ジオグラフィカはルートナビゲーションも可能。

 

GPSウォッチとスマホGPSアプリ、単純に機能を比較した場合、どっちが使いやすいかといえば、ハッキリ言って後者であると僕は思う。画面も大きく地図が細かく表示されるし、情報も多い。ガーミンのGPSウォッチはGPS精度等の機能は良いが、画面の大きさ故に使い勝手に限度がある。

 

スマートフォンのデメリット

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しかしここであえてスマホのアウトドアにおける決定的弱点を言うと、バッテリーの消費と、破損リスク操作性の悪さ紛失リスクが挙げられる。

 

まず、GPSスマホのバッテリー消費量が多い。となると、いざというとき電源が入らなくなるおそれがある。予備バッテリーが必須だが、仮に予備バッテリーも切れたらと思うと、スマホに全ての機能を集約することのリスクを感じる。

 

次に耐久性だ。特別な高耐久スマホを除き、iPhoneなどは大抵脆い。落としたら画面は割れるし、完全に水没したら高確率で使用不可になる。アウトドアには不向きなデバイスだ。

 

さらに、操作性について。街ならいざ知らず、タッチパネルは画面が濡れていると操作がしにくいため、雨の日にイライラしたことのある人もいるだろう。当然グローブをしていても操作性が下がる。タッチ対応のグローブも沢山あるが、冬山登山レベルになるとかなり厳しい。

 

最後に、紛失リスクも懸念事項だ。GPSを使用していると頻繁にスマホを見ることになるかもしれない。走っているときにいちいち取り出す行為は面倒なうえ、落としたり、取り出しやすいところに入れておいたら知らないうちに落としていたりするかもしれない。

 

誤解のないように付け加えるが、僕はスマホGPSアプリの性能自体はかなり有用だと思っている。しかしそのフォーマットがスマートフォンである以上、パフォーマンスに限界があると感じている。

 

スマートフォンGPSアプリは非常に便利で離し難いものだが、スマホひとつに頼りすぎると、アウトドアではそれを失ったときのリスクが大きい。だからスマホの機能を補うバックアップとして僕はGPSウォッチを推したい。

 

ソーラーGPSウォッチのメリット

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GPSウォッチはスマホ同様に電力消費が多いが、Instinct Dual Power はソーラー発電でそれを補う。正直、僕がGPSウォッチに一番付与して欲しい機能がソーラー発電だった。このソーラーこそが僕が本機種を購入した決め手と言っても過言ではない。

 

そもそも他機種と比べてバッテリー寿命が長い本作。使用中の機能にもよるが、太陽光に当てればバッテリー寿命をさらに延ばすことができる。あくまで延命のイメージであるが、パワーモード設定で各機能を適切に制限すればかなりの節電もできるため、数日の登山程度ならバッテリーの心配は無いだろう。また、エクスペディションモードを活用し適切な太陽光充電(50000ルクスに3時間以上)ができれば最大40日使用可能。

 

この50000ルクスとはどれくらいの明るさ(照度)なのか?100000ルクスで雲ひとつない晴天、曇天で30000ルクスとのこと。50000ルクスは夏の半日陰。夏山では十分実現可能な範囲だろう。

 

ちなみにエクスペディションモードとは、位置情報を一定時間間隔で記録していき(初期設定では1時間間隔)、その他のセンサーはオフになるモード。長期間のアウトドア活動に最適化されたモードだ。

 

タッチパネルではないが、操作性もアウトドアに最適で、視認性が良い大きなボタンはグローブをしていても操作可能。ボタンについて詳しくは後述する。

 

紛失リスクについても、装着しっぱなしであれば無くすことはない。重さ54g(実測値)、大きすぎない盤面なので付けっぱなしでも違和感は感じない。

 

耐久性とMIL-STD-810Gについて

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耐久面でもガーミンInstinctは頼もしい。耐久基準はアメリカ国防総省の軍規格(通称ミルスペック)MIL-STD-810G準拠ということで、このスペックについて調べてみた。

 

MIL-STD-810Gの原文は下記URLから閲覧可能(英文)IDにMIL-STD-810を入れて検索し、Revision G Chnge1を選択。ダウンロードに時間がかかる。

https://quicksearch.dla.mil/qaSearch.aspx

 

InstinctはMIL-STD-810Gのうち、

低圧試験 Method 500.6 ProcedureI,II

振子式衝撃試験 Method516.7 Procedure ⅥもしくⅣ

耐氷結試験 Method524.4

腐食試験 Method509.6

の4つの試験項目をクリア済みとのこと。それぞれどんなものなのだろうか。

 

まず低圧試験については、このMethod 500.6 ProcedureI,IIだと標高4572m動作確認済だそうだ。日本の山ならまず問題ないが、海外遠征レベルだと不安がある。

 

次に耐衝撃。これは要注意で、516.7Procedure Ⅵは日常レベルの耐ショック性能らしい。せいぜい机から落とすとかそのくらいだろう。少しがっかりである。しかし、実はGarmin公式サイトの情報が統一されていないことが判明。同じInstinct でエヴァンゲリオンコラボモデルは516.7Procedure Ⅳとなっている。

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もしもこちらが正しければ裸で落下高さ最大3.05mまで耐えられ、軍事輸送にも対応している耐久性である。個人的予想だとおそらく516.7Procedure Ⅳが正しいと思う。初歩的なミスであるがⅣとⅥの表記ミスだろう…。耐久性を謳っていてリペア台の上で十数cmの高さまでしか対応していないわけがない…。

 

次は耐氷結試験であるが、524.4という試験のバージョンを調べられなかったが、ガーミンの取扱説明書の動作温度範囲では最低が-20℃となっている。

 

最後に、509.6の塩水噴霧試験の項目では5±1%の塩水を噴霧し、これをクリア。マリンスポーツにも対応している。

 

防水等級はミルスペックとは別で、10ATMでいわゆる10気圧防水。水深100mの水圧に耐えられるのでガーミン公式としてはスイムやマリンスポーツが可能と謳っている。しかし10気圧防水で水泳をするとき、瞬間的に水圧が上がることもあるため要注意という見方もある。

 

ディスプレイはタフさと最高クラスの耐摩傷性を誇るコーニング社製ゴリラガラスDXを採用しているが、これはよくサファイアガラスの比較される。一般的な意見としてはサファイアガラスが最高とされているが、このゴリラガラスDXもサファイアガラスに迫るものになっている。コーニング社幹部はゴリラガラスはサファイアガラスの2.5倍の圧力に耐えられると主張している。

 

沢登りでも冬山でも使えるとは思うが、耐衝撃にはやや不安が残る。決して過信せず雑に扱わないほうが無難そうだ。とは言え…心拍計GPSナビ、各種ライフログ、アクティビティログ、さらにソーラーまで備えていながら、ここまでの耐久性は他社と比べてもなかなかのものだと評価したい。

 

手元で操作することの快適さ、安全さ

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何よりも、スマホと比べて全てを手元で、両手を塞がずに操作できるのがありがたい。特に足場が不安定な登山中や高速移動のランニング中は尚更で、行動中の安全確保にも繋がる。

 

GPSのナビ情報や現在地のABC(Altimeter 高度、Barometer 気圧、Compass 方位)も手元で見れるので、ついついスマホを取り出すのが億劫になって確認が遅れるということも少なくなる。地図やスマホGPSを持っていたのに確認を怠ってルートをロストするなんてことも防げるだろう。

 

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他にもスマホの通知の確認や、オーディオの再生もできるので、これをスマホを取り出さずに手元で行えるのは単純にストレスが無くて快適だ。

 

ライフログ機能

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GPS以外の大きな機能としては、盤面裏の光学心拍計による心拍測定がある(写真はボディバッテリー)。前作からのアップデートとして、dual power は水中対応の心拍計のため、水泳時の心拍測定が可能だそうだ。

 

心拍を可視化することで、運動時のオーバーワークを防ぐことが可能。心拍計測を利用して「ストレス」「睡眠の質」「ボディバッテリー」などの項目も教えてくれる。

 

スピードハイクにおいては心拍が上がりやすいが、これを可視化することで自分のペースを客観的にマネジメントすることが可能。

 

泊まりの山行であれば、睡眠でどれだけ体力が回復したかを測定することは重要だ。睡眠や休憩によって体力がどれだけ回復したかを定量化したのが「ボディバッテリー」だ。あくまで目安だが、無茶をしないための一つの判断材料になる。

 

ただし、Instinct はランニング特化モデルではないため、VO2maxの測定やトレーニングステータスの測定はできない。

 

 

アクティビティとトレーニン

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ガーミンのGPSウォッチと言えばランナーもよく使っているように、記録できるアクティビティは登山だけではない。これはスマートフォンの登山用GPSアプリと一番性格が異なる部分かもしれない。

 

Instinctにできるのは、登山以外の普段のランニング等(他にスイム、筋トレ、釣り、狩りなどおよそ30種類)のアクティビティを専用アプリGarmin Connect に同期・記録することだ。これだけでも自分のレーニングやヘルスケア管理がしやすくなる。狩りはもちろん、釣りも僕はやらないが、釣果やポイントを登録できるらしい。非常に捗りそうな気がするではないか。

 

ランニングについても、特化モデルほどではないが、インターバルワークアウトやバーチャルパートナーなどで目的にあったトレーニングをサポートしてくれる。

 

ナビゲーション

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ガーミンはGPSナビには圧倒的な信頼と実績がある。本モデルはGPSGLONASSGALILEO、みちびきの四機の衛星に対応。

 

登山のみならずランニング中もGPSでナビができるので予めGarmin  connectでコースを作成して走ればいちいちスマホで地図を確認する必要がなく、ストレスを感じない。これは不慣れな土地を走るときはかなり有効で、Garmin  connect上で距離と方向を指定すればコースを自動生成してくれるときにかなり便利だろう。

 

登山で有益そうなナビ機能をちょっとだけ紹介してみよう。まず日本百名山ナビ。百名山の山頂座標が全てあらかじめ入っているため、登山口でナビ→ポイント→山名を選択をすることで山頂への案内も可能だ。

 

あとはトラックバック機能。元来たルートを忠実に戻る案内をしてくれるので、山で遭難時に元のルートに戻る際に有用だ。また、スタート地点に直線で戻るナビルートも描ける。他にも色々あるが、ここでは書ききれない。

 

合理的でタクティカルなデザイン

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最後にデザインにも触れておきたい。フォルムとしてはいかにもアウトドア仕様のGショック的なデザイン。しかしそこにはアウトドア仕様ならではの合理的な美を感じる。

 

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バッテリー消費を抑える最低限のディスプレイは太陽の反射があっても視認性が良い。バンドを止めるループも二つあるので快適。カラーは豊富で、僕は暗闇でも視認性が良いイエローをチョイス。このイエローが「重機」っぽさを感じさせるマスタード色で、良いのだ…。

 

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左からSUUNT CORE、GARMIN Foreathlete220J、Instinct Dual Power。多機能なわりに従来モデルと大きく変わらない厚みに収まっている。

 

僕がよくできたデザインだと思うところとして、ボタンのつくりがある。SUUNTと比べてボタンが飛び出していないため、手首を屈曲させたときに誤って押すことが少なくなる。実際、そこを気遣ってか、右二つのボタンはフラットだが、左三つのボタンはやや飛び出している。ボタンがフラットな分、面積が広いため押しやすさは良好。

 

というわけで僕はとても気に入っているので山に行かなくても寝る時もほぼつけっぱなしで生活しているのである。GPSウォッチ導入に足踏みしていた人もソーラー化を機に検討してみてはどうだろうか。

 

ガーミン Instinct Dual Power Graphite 小

ガーミン Instinct Dual Power Graphite 小

  • 発売日: 2020/07/16
  • メディア: スポーツ用品
 

 

参考URL

産総研 https://www.aist.go.jp/science_town/standard/standard_03/standard_03_04.html

ガーミンジャパン https://support.garmin.com/ja-JP/?faq=4qoWO3kOFj1yhPWprw5N0A

米国国防標準化プログラム https://quicksearch.dla.mil/qaSearch.aspx

時計の専門店銀座RASIN https://www.rasin.co.jp/blog/beginners-guide/waterproof/

CNET JAPAN https://japan.cnet.com/amp/article/35044842/