2021年5月30日(日)に開催された「スカイライントレイル菅平」の記録と感想。
コロナ禍のなか、開催してくれた運営には大いなる感謝の意を表す。そして緊急事態宣言により、多くの地域居住者がエントリーできないなか、出場できてよかった。
- ーー予防線ーー
- これから始まる大レース
- レースに飲まれ気味の前半
- 20kmを過ぎて異変が
- レースに登山の合理性を求めるな
- 小根子岳へのハードな登り
- コース最高地点…そして右膝の死亡
- 家族の待つゴールへ…
- これからの課題
- スカイライントレイル菅平感想
ーー予防線ーー
登山はそれなりにやってきたが、定期的にランニングを始めて1年と半年、トレラン歴に至っては数回しかやっていない男による43kmのトレランレースの記録。
まず、ランニングレースに出たのが11年ぶり2回目、大学生4年のハーフマラソン以来であった。そして自己最長走行距離は昨年末の1人フルマラソンの42.2kmが最長。よく考えればそれでトレイルの43kmに挑むのは背伸びが過ぎた感は否めない。
それでも昨年の11月まで月間100km以上の走行距離を12月から200km以上に伸ばした。まあそれでも全然足りないのだが…。山に入る機会もほぼないのでロードばかりで標高も稼げない日々。そういう状態でトレイルレースに出るとどうなるのか…?
事前目標は7時間切り。最低目標でも8時間切りだったのだが……。
と、予防線を十分に張ったところでレースを振り返ってみよう。
これから始まる大レース
朝、ほんのり冷える菅平高原。少しガスがかかってきたが、徐々に青空が。
装備ばっちり。
開会式。早朝にも関わらず上田市長が来ていて、自治体全面協力でトレランを盛り上げる気概があって好感が持てる。
スタートはウェーブスタート。もともと遅いくせにほぼ最後尾からのスタートとなってしまった。
スタート直後はロードでゲレンデの斜面を目指す。思い返せばここは貴重なロードだったと思うほどトレイル率は高い。
キャベツ畑と根子岳、四阿山。遠くに綺麗に見えるなんて呑気なことは言ってられない。これから向こうまで行くのだ…。
レースに飲まれ気味の前半
大松山への登り。ゲレンデを駆け上るとみせかけて歩かざるを得ない傾斜。
大松山は最後に急斜面が待っている。思い返せば、このあたりは元気すぎて飛ばしていた。わかっていたが、周りがいるとレースに飲まれて自分のペースで走れないものだと痛感。
あの遠くの山が単なる景色なら良いものの、コースなのだからつらい。しかしまだこのときはそのつらさがどんなものか想像できてない。
つばくろ山らへんの縦走路…だと思う。走れるところは走らねばと気負ってしまっていた。これがオーバーペースだと気づいたのはだいぶ後になってから。
第1エイドで一応水をもらう。今思えばスルーでもよかった。レース運びに慣れない。このあたりからはもう人はまばらになる。
また山に入り、降りて、第2エイドへ。菅平饅頭が美味い。
第2エイドを過ぎるとハーフの人たちと合流しダボスの丘を目指す。人が増えてまたレースに飲まれ気味になる…。
それでもまだ元気だったダボスの丘。前半のハイライトのひとつだ。
20kmを過ぎて異変が
ハーフ組と別れ、牧場脇の単調なトラバースに入ったら人は一気に減り、前や後ろにポツンポツンとランナーがいる程度。
同時に、脚や臀部の疲労を感じるようになり、明らかに気持ちが萎えてきた。
ここでタイムの異変に気づく。そんなに飛ばしたつもりはなかったが、20kmで3時間10分くらいだ。僕にとっては速すぎる!と気づいた時にはもう遅かった。
僕の計画だと4時間弱くらいでよかったはず。どうりで辛くなってくるわけだ。その事実で余計気が萎えて、身体が重くなった。ここから先はもう楽しくないなと思ってしまった。
レースに登山の合理性を求めるな
四阿山への登山口に着く。しかし四阿山のピークに行くわけではない。疲労していると言い訳じみた考えばかり浮かぶ。
この登りは単にレースの距離と累積標高を稼ぐための登りなのだ。登山にはそういう考えは馴染み難い。山頂まで行って根子岳まで縦走するのなら理にかなっているが…。
このレースでは残念ながらここで引き返し、ひとまず下山をする。わかっちゃいる。わかっちゃいるが、その非合理性に腹が立ち、メンタルはさらにやられた。アドレナリンも出ない。しかしトレイルレースとはこういうものだろう。
トラバース気味に山を下る。このままゴールでいいじゃないか。また登り返すんだろ?しかも隣の尾根を…。そんな必要ある?
と、グダグダ考えなが第3エイドに到着。待ち侘びたエイド。長かった…。
ご褒美の北アルプスはほとんど見えず。
コーラがありがたい。
小根子岳へのハードな登り
チェックを通過して牧場へ。
牧場越しの根子岳。発情するウシ。
のんびりした牧場の風景は束の間の癒し。
やがて激しい登りが。スキー場?牧草地?の斜面なので日陰がずーっと無い。ここから地獄の標高差460mアップだ。
前半は登りと下りの2レーンになっていて、速い人がもう続々と下っている。僕も下りたい。
避難小屋らへん。森林限界を越えた登山道が続く。日差しが強く、キャップに取り付けたサンシェードを用意して本当に良かった。
登りでイメージしたのは南アルプス長期の二日目の地獄のような重荷での登り。あれに比べればなんとかなる。そしたら数名抜かすことができた。
コース最高地点…そして右膝の死亡
山頂到着時に6時間50分経過。7時間切りは遥かに叶わなかった。山頂はガスに巻かれ、遠景は望めず。しかしもう登らなくていいんだという喜びがあった。
そして残り10km。かなり飛ばさないと8時間切りは難しい。
そしてここからの下り、恐れていたことが発覚。右膝の死亡である。8時間切りも無理だと悟る。まあ歩いても完走は確実だから無理せず行くしかない。
それにしても全然進まない。曲げると痛いのでなんとか痛くない歩き方を模索するも、長続きはしない。登りで抜かした人全員に抜き返される。悲しい。
登り口へ降りたらロードだと勝手に思っていたけど違った。こんな石がゴロゴロしたゆるい斜面が続いていて、まさに膝殺しである。
もうどのへんを歩いているのかもよくわからないまま、とにかくコースマーキングをたどる。
かなり置いてかれてもはや誰もいないので浅間山と烏帽子の絶景も独り占め。タイムも気にしなくなって、開き直ったら少し楽しくなってくる。
ダボスを下れば第4エイドだ。ここらへんで大会ドローンが目の前に現れて煽ってくるので、そこだけ一生懸命走った(笑)。
ゲレンデの下りは急で膝が痛い。非常に危険だが後ろ歩きをすると楽だった。第4エイドでは即効性のエネルギーとして定評のある炭酸抜きコーラをボトルにイン。
家族の待つゴールへ…
最後のゲレンデの下り。ここはスキー初心者向けなのか、斜面が緩くていい。
ゲレンデを降りてすぐそこがゴールのはずなのによくわからない。道路横断誘導の警備員のしかいない。
スタート会場の裏手らしいが、歩道に白線で矢印があるのみ。本当にあってるのか疑問のなか、建物の曲がり角を曲がるとゴールが。
実はこの2時間くらい前に家族が会場に到着し、連絡が来ていた。そんなに早くゴールなんて到底できないので15時以降になるとLINEをする。案の定15時半近くになってしまった。
待ちくたびれたろうから、ゴール前で「そろそろゴールする」とLINEをする。
そしたらゴール前できっちりお出迎えしてもらえた。感謝。情けないタイムだけど家族に盛大に迎えられ、MCの方にも名前を呼んでいただいて恥ずかしくも、ありがたかった。
レース後は感無量ということもなく、必達したかった8時間切りも出来ず、これからの課題、トレランへの向き合い方などが頭がよぎる。しかし、もうレースに向けて何か準備する必要が無いと思うと、気が楽になった。それが一番嬉しい。レースというのは自分には重荷過ぎるのかもしれない。
これからの課題
レースを体感してみて改めて感じたことをいくつか。
まず事前の作戦が失敗であったこと。レースに飲まれ、マイペースが貫けなかった。それと単純な絶対的体力不足、そしてレースに耐えるメンタルの弱さが目標を大きく下回った要因だ。
平地でフルマラソンの距離しか走ったことがないのにトレイルでいきなり43km走るのは馬鹿げている。長距離トレイル耐性をもう少しつけたほうがいい。ハーフにすればよかったな…。
あと、やっぱり性格がレースに向いてない。レースの雰囲気に飲まれ、いつものように山を楽しみにくくなる。登山とは感覚が違うことに戸惑いがあったことは否めない。
自分のペース、自分の山という感じでじゃなく、走らされている感がある。レースなので当然なのだが、レースでテンションがアガる感覚が無い。いつも山で感じている開放感がなく、アドレナリンが出ない感じ。
とはいえ、それは十分なフィジカルがあれば気にならないのかもしれない。結局のところ、持久力がまだまだ雑魚すぎた。単純にトレランの経験が足りない。これからはもっとロングのトレイルでトレーニングをやっていきたい。月間走行距離200kmならば、月間の累積標高10,000mを稼がなくてはならないと痛感した。
しかし、そんな時間あるのか?という問題はある。
スカイライントレイル菅平感想
個人的な記録とは別に、レース全体の感想を。
初レースに出た者としての感想として、運営のホスピタリティ、エイド、手際の良さはどれも申し分ないと思った。コロナ禍でありながも不便も特になく。コースマーキングもわかりやすく道迷いの心配も杞憂だった。
何よりコースの立地が良い。日本百名山四阿山の隣に位置する根子岳の森林限界を越えた尾根や、美しく開けた牧草地帯、浅間山や北アルプスの遠景が見えるスキーゲレンデなどを走れる。登山ルートとしても一流だ。
あと、肉屋みたいな参加賞Tシャツもイカしてた。
来年、もしも今より強くなれていたら、また参加してみたい。
おわり
2021年6月3日