軽速山歩

登山者が実践するファストパッキングスタイルへの道

ファスト系登山のためのローカットシューズ選びの誤ちと反省

ファストパッキング(速攻登山)、スカイランニング、トレイルランニングのシューズの選び方についての今更の反省、気づきなど。

 

ハイカットかローカットか問題の先の話

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ローカットシューズってどれも同じようなものだと思っていたけど、ちゃんと路面に合わせて吟味すべきであるという当然のことにようやく気づき始めた。登山初めて15年目でようやく…。

 

登山には登山靴を履くものだと教わった身としては、山を歩くシューズを大きなくくりとして、ハイカット(またはミッドカット)の登山靴とローカットシューズの二分類で見ていた。登山でローカットシューズの是非がネット上でも話題になることがあるが、ローカットでも良いとして、じゃあどういうローカットが適しているのか?という議論まで至ることは少ない。

 

登山靴についてはクライミングに強い靴や冬靴、縦走系、沢…など更に細分化して考えることに慣れているが、ローカットシューズについては知識がないので、見方の解像度が低い。つまり僕は、登山靴じゃないローカットシューズならどれもだいたい同じだろ?と思っていたわけだ。

 

これは言語も似ている。「雪」の呼び方が日本語では「みぞれ」や「牡丹雪」など色々あるが、英語ではSnowしかなく、雪があまり降らない国では雪はどれも同じだろ?となる。その物事に慣れ親しむにつれて、コレとアレは分けなければならない、同じではない、というふうに解像度が上がっていくものだ。ローカットシューズ問題の是非でもローカットについて多く語られないのは、登山者の多くがローカットシューズの登山に親しみがないからとも言える。

 

登山スタイルともに変わったシューズ

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話をシューズに戻すと、僕のシューズ変遷はまさに登山スタイルと重なっている。登山を始めた頃の無雪期の靴はアッパーがナイロンの軽登山靴。その後、アッパーがヌバックに。そしてセミワンタッチアイゼン使用可能なライトアルパインブーツへと移行していった。行く山もアルプスを中心とした岩稜のある高山ばかりだった。

 

結婚、子育てを機に山に行ける回数が激減し、代わりにトレーニング名目でのロードランニングの回数が増えてきた。そうなると登山靴よりランニングシューズへの投資の方が増えてくる。

 

ロードランをするにつれて、山行スタイルも低山トレラン寄りに変わってきた。日帰り速攻登山ならミッドカットやハイカットよりローカットのほうが動けると思い、ローカットならトレランシューズという選択に。ランをしているので、当然ラン寄りのトレランシューズのチョイスとして、アルトラやホカオネオネに手を出す。かっこいいし、流行っているし。

 

シューズは地形と荷物の量で選ぶべきなのに

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しかし!久々に、実に4年ぶりに北アルプスに行って、気づいたことがある。僕のスタイルやシューズはすっかり低山トレラン仕様になっていて、それで北アルプスに行ったらやっぱり何か違った。登山靴のような堅牢なソールの方が岩歩きは楽だと感じたのだ。

 

ここで僕は山でのシューズ選び方について、根本的なことに気づいた。

 

岩が多いアルパイン領域を重量を背負い歩くときのシューズがハイカットの重登山靴。アルパインを軽量速攻で歩くなら、ここから剛性や足首の保護を引き算したシューズを選ぶべきだ。引き算と言ってもベースが山岳のための登山靴なので引きすぎないのがいい。すると形状はアプローチシューズのようになっていく。

 

一方、トレランシューズはロードランニングシューズに足し算をして作られているものが多いと感じる。何を足し算しているかというとラグの深さだったり、つま先の保護だったりである。しかしベースがロード用なので最低限の足し算しかされておらず、走りやすさが最優先なのだろう。

 

国が違えばシューズも違う

トレランシューズにしても、メーカーがどこの国かによってつくりが結構変わってくる。ランニングシューズベースのメーカーはアメリカに多く、これは比較的走りやすいトレイルや100マイルレース文化があるからだろう。メーカーで言うとアルトラやホカオネオネなどがそうだ。

 

一方、ヨーロッパはスカイランニング発祥の地であり、アルプスのような岩場が多いため、堅牢なものが多い印象。ソールはラバーで全面覆われており、ミッドソールの柔らかい部分は露出していない。メーカーで言うとスポルティバやサロモンなどである。最近ではスポルティバがアプローチシューズとトレランシューズの中間のようなシューズ(TX guide)を出していて、とても興味深いし、これはニーズがあると感じた。

 

 

 

こう考えると、日本のアルプスの地形に向いているのはスポルティバやサロモンのほうだろう。日本でも「走れるトレイル」が多い低山ならアルトラやホカオネでもOKだ。

 

登山靴の延長線上からトレランシューズを選ばなかった

ここで僕の北アルプスでの違和感の話に戻る。僕は登山畑の人間だったのに、一度ランニングカルチャーやUL系に感化されて、ローカットシューズ、カッコええなあと思ってからローカットシューズ登山に入門してしまったのは事実だ。そしてアルトラやホカオネ系のランニング系のシューズを選んでしまったのだ。

 

ランニング系やUL系が悪いわけではない。物には適材適所があり、僕がそれに反していただけだ。登山系の人間がローカットを選ぶのであればスポルティバあたりに行くのが妥当だったんだろう…。でもデザインがあまり好みでなかったのが本音である。

 

当然ながらランニング寄りのトレランシューズでも2,000m以下の森林限界下トレイルは快適で不具合は無かった。しかし、北アルプスに行き始めてやっぱりシューズを変えた方がいいことに気づいた。もちろん体力やスピード、好みの個人差はあるし、異論は認める。

 

脱登山靴がかっこいいと思っていた

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ローカットシューズに理解がなかったことも災いしている。ローカットで山を歩こうとしたとき、アプローチシューズのようなシューズで軽快に歩くイメージもなかったからトレランシューズだなと。

 

トレランシューズならソールの柔らかさについてはどれも同じだろうし、走るなら柔らかくてもいいだろうと思っていた(どうせ走れないのに!)。足裏が鍛えられていれば硬い必要はないとも思っていた。別につま先で立つような岩場に行くわけでもないしとも思っていた。何よりあの暑苦しくてがっちりした登山靴から脱却することがかっこいいことだと思っていたのかもしれない。

 

実際は違った。少なくとも僕は体力がないので当てはまらない。

 

体験は大事

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トレイルサーフェイス(路面)によって適切なシューズを選んだ方が、足のためにもシューズのためにもいいに決まっている。

 

ローカットの分類について、頭で理屈は理解はしていたが、ローカットでの登山は経験不足のため、実際こうまで違うのかというのは理解してなかった。やはり経験は大事だ。体感してみて、トレランシューズになんであんなに種類があるのか、少しわかった気がする。

 

結論として、僕のローカットシューズ全般への不理解、登山靴脱却主義、アメリカ系トレランシューズへの盲目的信仰、憧れが、正しい靴選びを妨げていたように思う。それぞれのシューズには適した路面があり、さらに歩き方、速度、荷物の量、履く人の体力が加味されて初めてシューズの能力を発揮する。これらは体感しないとなかなか理解できない。今なら少しは理解に近づいたので、より一層シューズ選びが楽しめると思う。

 

端的に言えば、山をある程度速く歩くのに必ずしもトレイルランニングシューズである必要はなく、ガレ場やゴーロ帯が多いルートならむしろアプローチシューズのほうがいいと思う。斜度がある路面ならソールが屈曲しにくくてもさほど支障は無いだろう。ローカットであれば十分軽快に歩ける。

 

とりあえず今はスポルティバのTX Guide が欲しい(笑)。これが日本の岩のあるアルパインファストパッキングにはベストな気がする。

 

おわり

2021年7月30日

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